猫ちゃんの怖い病気の1つである、猫伝染性腹膜炎(以下FIP)についてです。
FIPは非常に致死率が高く、猫ちゃんとその飼い主様に長く恐れられてきた病気です。
しかし近年FIPに対するガイドラインはアップデートされています。
一頭でも多くの猫ちゃんを救うためにゆう動物クリニックも治療を行っています。
<まずFIPという病気について>
60年前に病原体がコロナウィルス(FCoV)であることを発見しました。
しかしFIP発症を予防するようなワクチンはいまだに存在せず、FIPが発症した時に治療を行う
対応となっています。
飼っている猫ちゃんの約40%がFCoVに感染している(2匹以上いるお家の猫ちゃんは90%以上との報告も)
と言われていますが、その中の一部の猫ちゃんは一時的に感染しているのみで、一部の猫ちゃんは持続的な
感染となり、一部の猫ちゃんがそこからFIPを発症すると言われています。
また、若い年齢の猫ちゃん、雑種の子より純血の猫ちゃんに多いともいわれたりします。
<FIP診断について>
○身体検査
元気がない、食欲がない、体重が減ってきた。または増えない、抗菌薬に反応しない熱、
黄疸、リンパ節が腫れている、お腹が膨れたりしていないか?お腹の中にしこりなど触れるものはないか?
吐いたり、下痢はないか?
呼吸が速くなっていたり、呼吸困難ではないか?
心臓の音はどうか?
陰嚢が腫れていないか?
神経の異常はないか?(痙攣、異常行動、情緒不安、眼振、ぐるぐる回る、意識レベルの低下、
眼の大きさが左右で違う、運動失調、四肢麻痺、または片側の麻痺、知覚過敏、神経麻痺など)
眼はどうか?(ぶどう膜炎、脈絡網膜炎、失明、前房出血、脈絡血管炎、網膜剥離、角膜沈殿物、瞳孔の異常
た眼の大きさはどうか?眼の色(虹彩)の変化はあるか?
皮膚はどうか?(丘疹、血管炎、静脈炎、皮膚が脆弱ではないか?など)
○血液検査
全血球検査
非再生性貧血、小球性赤血球が出てきないか?、リンパ球が減っていないか?、血小板はどうか?
桿状核好中球はどうか?
初期では正常なこともあります。
血液生化学検査
高グロブリン血症、低アルブミン血症、高ビリルビン血症などはないか?
炎症マーカー
SAAやα1AGPの高値
(当院では院内で迅速に測定できます)
○滲出液の検査
胸の中やお腹の中に液体が貯留していた場合、採取し細胞診検査や、性状を検査します。
典型的なFIPのさん出液は透き通った黄色でやや粘り気があります。
○画像検査(レントゲン検査、超音波検査)
お腹の中の軟部組織に異常がないか?貯留液はないか?、お腹の中のリンパ節は腫れていないか?
腎臓や腸の形状は変化していないか?
胸の中に液体が貯留していないか?
神経症状がある猫ちゃんにはCT検査やMRI検査を勧めることもあります。
○遺伝子検査(PCR検査)
状況により検査する場合があります。
○病理組織学的検査
病理組織学的検査は診断的価値が高いとされています。しかし実施するには血管炎や化膿性肉芽腫などの
病変を複数箇所採る必要があります。
FIPは様々な症状、様々な検査所見が考えられるため、他の病気との鑑別も重要となります
例えば、細菌性腹膜炎、胸膜炎、リンパ腫などの腫瘍、トキソプラズマ症、膵炎、リンパ球性胆管炎、
心不全、抗酸菌症、外傷など様々です。
<治療について>
当院では抗ウィルス薬のモルヌピラビルを主に取り扱っています。
この薬を使用するにあたって、飼い主様としっかりとした相談は必要になりますが、
当院で治療させていただいた症例はほどんどの猫ちゃんが寛解しております。
またそれ以外にはインターフェロン、抗炎症薬、その症状に合わせての対症療法を行います。
また併発疾患として免疫介在性貧血や全身性炎症反応症候群などもあります。
FIPは高致死性の病気でありますが、近年FIPの治療はアップデートされています。
そして少しでも早めに診断し、治療を開始することが勧められています。
獣医師としっかり相談を行い、猫ちゃんとご家族にとって最善のケアをしていきたいと考えております。